いよいよ東京都青少年問題協議会がスタート

■同日、第1回専門部会「児童健全育成部会」も開催された

 総会に引き続いて第1回専門部会が開催されました。専門部会は自画撮り被害対策をテーマとする今回開催の「児童健全育成部会」と、引きこもり支援などをテーマとする「若者支援部会」に分かれており、今回は前者の部会で、委員は次の皆さんです。

部会長 木村光江(首都大学東京教授)wikipedia
    浅田眞弓(弁護士・あおい法律事務所
    坂元 章お茶の水女子大学教授)
    宍戸常寿東京大学教授)
    吉田 奨セーファーインターネット協会専務理事)
    吉田善博(都民公募)
    渡辺真由子(メディア学者、ジャーナリスト)wikipedia

 今回は宍戸委員が欠席で6名が出席。委員紹介に続いて廣田耕一東京都青少年・治安対策本部長の挨拶と「児童ポルノ等被害が深刻化する中での青少年の健全育成について」という諮問事項についての説明があり、木村部会長の司会で。各委員が挨拶に立ちました。以下は書き起こしからの要約です(聞き取れない箇所もあり、あくまでも文責は筆者にあります。また公式の議事録が公開された後に訂正する可能性があります)
廣田耕一東京都青少年・治安対策本部長

廣田青少年・治安対策本部長

廣田青少年・治安対策本部長


 スマートフォンの急速な普及やインターネットの低年齢化に伴い、これらに起因するトラブルについての青少年からの相談が増加傾向にあり、性的画像等に関する相談が急増。東京都は子供、親への啓発、相談対応、有害環境の改善を行ってきた。しかし、児童ポルノ等の性的画像の作成・提供を求める悪質な働きかけについては、画像の送信を未然に防ぐための有効な方策がない。このような悪質な働きかけはSNS等で知り合った面識のない相手から一対一のやりとりに誘われ、その中で子供が脅されたり、騙されたりするもので、通信事業者の方でも、一対一のやりとりを警戒したり、監視したりはできないし、保護者もなかなか気付かない。働きかけ自体が刑法の脅迫罪や強要罪に抵触する程度のものであれば、相手が画像の入手に至る前でも未遂罪として適用されることになるが、坂元委員のプレゼンにもあったように、子供の将来予測能力の未成熟に付け込んで、刑法上の犯罪に抵触しないやり方。児童ポルノ法も画像の入手に至って初めて、製造罪として違法になるという限界がある。画像の送信を未然に防ぐために有効な方策を打ち出すことによって、被害に苦しむ児童を一刻も早くなくしたい。具体的な方策を論議いただき夏頃を目途に、試案を策定していただきたい。

事務局
 都の取り組みについての補足説明。子供・親の啓発、ネット利用の危険性やフィルタリング設定、ネットに関する重要性を子供保護者に説明する場として都内各所で年間計約600回の啓発講演会を開催。教育庁では平成27年に「SNS東京ルール」を策定し、ネットに関する学校ルール作りを中心に、SNS利用一般について児童に考えさせる機会の場を提供。警視庁によるものを含め、各種リーフレット、ポスター等において危険性の啓発を行っている。相談対応については電話、メール等による相談窓口として、東京こどもネット・ケータイヘルプデスク「こたエール」を運営。警視庁ではSTOP!児童ポルノ・情報ホットラインを開設。有害環境の改善として、青少年条例に基づき立入調査により、都内の携帯電話販売店におけるフィルタリングの説明状況を確認。警視庁は児童ポルノ時半の取り締まり強化、STOP!児童ポルノ官民連絡会議の開催し、関係機関と情報交換をはかっている。

浅田眞弓委員

浅田眞弓委員

浅田眞弓委員


 東京弁第一弁護士会所属。子供法委員会で子供の権利、非行問題に関する委員会に所属し、活動している。7〜8年前、子供とインターネットについて関東の弁護士会連合会で、取り扱っていて、その時の問題点、今回の問題点は色彩が異なる部分もあるが、子供に対する教育の問題だったり、共通点はあるのかな。具体的な議論ではないが、最近、三つの弁護士会の中で子供の学校に行き、イジメ防止授業などの弁護士が直接学校に行って生徒、児童に授業を行うと。非常にインパクトがある。今回のケースとは違う。そういった教育者、保護者とは別の立場のものがネット利用に関する危険性などを啓発することと、各弁護士で子供に関する相談窓口を設けている。つなげていく。弁護士会としてできるのではないかと考えている。今回のケースについては、これからの条例によって、規制していくかということも不可欠だが、教育的観点からは弁護士会としての取り組みも視野に入れていいのではないかと。

坂元章委員

坂元章委員

坂元章委員


 啓発活動について。リベンジポルノはすでに教育コンテンツに入っていて、啓発活動の中で語られている。自画撮りが急速に注目されるようになってきたので今作っている教材に入ってきている。どんなコンテンツがあるのか情報を集めて、整理してくいと考えやすいと思う。

吉田奨委員

吉田奨委員

吉田奨委員


 2009年くらいに、警察庁生活安全局長の諮問機関の総合セキュリティ対策会議の方でブロッキングが議論になり、業界をまとめて欧米諸国の後追いとなったがブロッキングをなしとげた。児童ポルノブロッキングは日本の契約ユーザーに見せないようにするギリギリの対策なので、より本質的には削除を推進していかなければならない。昨今、こういう情報は海外のサーバーにアップロードされるので、なかなか司法が及ばない。一に摘発、二に削除と言っているが、次善の策である削除も海外においてもやっていきたい。セーファーインターネット協会で業界の有志が集まって、海外の方にも削除依頼を出している。これをリベンジポルノにも拡大。東京都ウィメンズプラザとも連携し、削除に絞って頑張っている。こういう問題はAV強要問題をはじめどんどん広がっていく状況。そもそもそういったものが作られないように、いかに減らせるか。条文はどうなるのかという声もあり、慎重に討論した上で決めていきたい。

吉田善博委員

吉田善博委員

吉田善博委員


 小中学校のPTA、少年補導員、保護司という立場。被害にあう青少年、保護者に対する理解啓発が必要になってくる。義務教育ではICT教育の推進ということで、そのうち、タブレットを一人一台保持するだろうという時代になってくるだろう。そういう中で情報モラル教育を並行して行っていくということは重要。

渡辺真由子委員

渡辺真由子委員

渡辺真由子委員


 メディアの人権を研究。ジャーナリストとして現場で被害児童の取材を続けている。その中でわかってきたのは、今の子供たちは単に裸の画像を撮るな、送るなと言われても自制が効かない。特に恋愛状態にある時、悩みの状態にある時、相手から上手い言葉で誘われた時についつい乗ってしまう。対策としてはネットリテラシー教育は有効ではあるが、それだけでは足らない。特に重要になってくるのは、子供たちが被害を受けるケースでも、たとえばデートDVは同世代の間の関係性の中で力関係が上下ある中で起きる。加害者も児童。自画撮り被害について考える場合には子供たち守ることも大切だが、子供たちが加害者にならないためにはどうすればいいかを踏まえて考えたい。

木村光江部会長

木村光江部会長

木村光江部会長


 児童ポルノや児童買春について、関心を持っていて、法改正だとかを追っている。今回のテーマは、被害が深刻になる。充分検討を加えて考えていきたい。

宍戸常寿委員(欠席・コメント代読)
 児童ポルノ等の性的画像を青少年本人が撮影送信することのないよう、その危険性等について青少年に対する教育、啓発を進めることが肝要ではないか。とりわけ青少年にインターネットサービスを提供している事業者との実効的な協力関係を構築することが都には望まれるのではないか。2点目、当部会において、現在のネットに起因する被害の内、私的画像に関連するものがどの程度の割合を占めており、その特質はどのようなものか、従前の被害に対する対策が有効であるか等について、例えば違法有害情報センター等の外部の知見を得ることが望ましいのではないか。3点目。仮に条例により、児童ポルノ等の私的画像を青少年本人が撮影、送信するよう他者が求める行為について、なんらかの規制を検討するにあたっては、次の点が論点になると思われる。

(1)地方公共団体において、条例による係る規制をすることが地方公共団体の事務の範囲内にあると言えるか? また児童ポルノ法との関係で係る規制が矛盾衝突するとはいえないか?
(2)係る規制が不当な表現の自由制限にならないよう、規制の対象となる行為の範囲をいかに定めるか? また、その定めかたがいかなる行為が規制の対象となるかについての予測可能性を保障しているか?
(3)仮に刑罰、とりわけ直罰による対応を予定する場合には現実の法益の損害発生よりも、処罰を前倒しすることになることとの関連で、どのような行為を対象することが妥当か

 ついては上記(1)〜(3)について当部会で議論を深めることを検討願いただきたい。また事務局においてはこれまでの児童ポルノ等に対する対策で、及びいわゆる立法事実について当部会の議論の要に供するような資料の整理をお願いしたい。

■今後の協議会スケジュール
■第2回児童健全育成部会 3月24日(金) 10:00〜12:00
■第3回児童健全育成部会 4月13日(木) 15:00〜17:00
■第4回児童健全育成部会 5月初旬
■第5回児童健全育成部会 5月末頃
■第2回総会 夏頃
■第1回若者支援部会(※) 夏頃より
■第3回総会 2018年末

※若者支援部会:「ひきこもり、ニート、非行等の社会的自立に困難を有する若者に対する相談支援における課題と対応について」を検討・審議する専門部会

■児童保護、被害児童ケアから乖離しない答申を
 Twitterでも触れましたが、今回の総会と専門部会では「二次元規制」「創作規制」の話は一切出ていません。その点はひとまず安心していただきたい。ただ、協議会は青少年条例改正を前提としているので、何らかの規制を含んだ改正を求める答申が夏頃には出る可能性が高いと思います。改正案に盛り込まれる規制が、「自画撮り強要」規制なのか「自画撮り」規制なのかということを見定めていきたいと思います。

 自画撮りと送信を脅迫等によって強要する、または詐欺的手口によって詐取することは極めて悪質であり、青少年の人生を狂わせかねない重大な犯罪です。ただ、そこで留意したいのは、青少年の表現の権利です。表現としての、あるいは記録、記念としての自画撮り、つまりブログ、SNSに自ら掲載するような自画撮りまで規制するとしたら、それは過剰であり、“表現の自由”にかかわる問題です。犯罪被害を予防し、被害児童をケアするという目的から乖離しない答申を期待します。(永山薫)

3月9日、音声起こし漏れを追加しました。赤文字部分です。


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