■規約にない理由でのブログ削除宣告
2014年3月31日、GMOメディア株式会社が同社の運営する無料ブログサービス「teacup.ブログAutoPage」を利用している複数のユーザー(フィギュア制作者など)に対し、次のような連絡を行ったことが明るみに出た。
「このたび外部機関より、ご利用ブログに児童ポルノまたは それに類する疑いのある内容の投稿があるという指摘があり、 昨今の社会情勢の変化等を鑑みた結果、誠に申し訳ございませんが、 当ブログを削除させていただく事となりました」
言うまでもなく現行の児童ポルノ禁止法は、あくまでも実在児童の人権を守るための法であり、創作物を規制するための法ではない。先行きは不透明とはいえ、漫画・イラスト・アニメ・ゲームなどの架空のキャラクターを描いた表現は「児童ポルノ」ではない。「児童ポルノ」という用語は法的に裏付けのある用語であり、扱いには注意が必要だ。
GMOメディアの規約には、創作物を「児童ポルノまたはそれに類する疑いのある投稿」といて排除する条項は存在しない。しかも今回は児童ポルノには当たらない表現に対して、あたかも児童ポルノであるかのような決めつけを行った。そもそもブログ削除を決めた担当者は児童ポルノ禁止法を読んだことがあるのだろうか?
■フィギュアは児童ポルノではない
こうしたGMOメディアの理不尽とも言える削除通告に対し、ライターの廣田恵介氏は、『フィギュアは、児童ポルノではありません。』と題する署名キャンペーンを4月3日から開始。約一週間で目標の1000名を超える1118名の署名を集めた。
詳細は当該署名ページを参照して欲しいが、呼びかけ文もGMOメディアに宛てた抗議文も極めて真っ当な内容である。
確かに、エロチックなイラストやフィギュアの画像に対して不愉快な感情を持つ人がいるのも事実だろう。それを批判する自由は万人にある。だが、議論を行うことなく、根拠となる規約を示すことなく、一方的に「児童ポルノ」として断罪し、排除しようとする同社の対応は、メディアという公器を扱う企業として異様としか言いようがない。
■問われる企業倫理と社会的責任
抗議署名がGMOメディアに手渡される4月9日午前、マンガ論争取材班は朝日新聞社、日本テレビの記者とともに同社前に集合した。この件に関して同社は取材を受け付けておらず、残念ながら社内に同行はできなかったが、抗議署名提出後、廣田氏と、抗議に賛同し、同行した山田太郎参議院議員、同議員が顧問を勤めるエンターテイメント表現の自由の会(AFEE)の坂井崇俊氏を囲んでの取材を行った。
まず、GMOメディアが排除しようとした当該ブログに掲載されたフィギュアの画像は、廣田氏の証言によれば、一番エロチックなものでも「水着姿の少女」程度だったそうだ。10日に問題とされた画像を確認することができたが、廣田さんがおっしゃるようにレオタード的なコスチュームをまとった少女キャラの立ちポーズ画像だった。児童ポルノと言うからには、幼女キャラのフィギュアが陵辱されているようなものを想像しても不思議ではないが、全くそうではない。これがアウトとされるのであれば、ほとんどの少女キャラを造形したフィギュア、少女キャラを描いたイラストや漫画もアウトとなる可能性がある。
また、行政や団体を想起させる「外部機関」は、正確には広告主であることが判明した。広告主という利害関係者を「外部機関」と呼ぶこと自体おかしな話であり、責任の所在をぼかすためのミスリードだったのではないかとも言えるだろう。今回の事件の一つの焦点が「外部機関」であったことは言うまでもない。外部機関が行政や、ある種の圧力団体だという憶測が拡がれば萎縮効果をもたらすことになる。これはメディア企業の社会的責任という見地からも看過できない。
広告収入を基盤とする私企業としては、広告主の意向に従うのはあながち間違いではない。しかし、広告主の理不尽な、すなわち「児童ポルノまたはそれに類する疑いのある投稿」などという無根拠な指摘に盲従することは企業倫理としてどうなのか? ということである。
■不可解な対応
今回の会見で、GMOメディア側は「児童ポルノ」については誤りであったことを認めたという。また、削除宣告を行ったブログユーザーに対しても同日中に、
「今回のブログ削除に関するご連絡において「児童ポルノまたはそれに類する疑いのある内容の投稿」という不足した表現を使用したことにより、本来児童ポルノにあたらないものについても該当するかのような誤解と混乱を招きましたことを、深くお詫び申し上げます」
という謝罪が行われた。つまり、ブログ削除の根拠はないというになるわけだが、奇妙なことにGMOメディアは当該ブログの削除を撤回していない。これは一体どういうことだろうか? 広告主の意志が最優先ということだろうか?
自らの非を認め、当該ブログの移転のために、本来は有償ユーザー向けであるツールの無償提供を決めたことは評価すべきだという意見もあろう。
だが、現状復帰がなされない以上、根本的な問題はなんら解決されていない。
GMOメディアは早急に削除を撤回し、公器としてのメディアを扱う責任ある企業として、ブログ削除に至った経緯を公の場で説明すべきだろう。
私企業が独自のレギュレーションを持つことは悪いことではない。だが、その基準を明示せず、一部のユーザーを切り捨てるようでは信頼関係は成り立たない。
(編集長/永山薫)
■参考記事
廣田恵介氏のブログ『550 miles to the Future』
■0402・怒■
■0403・署名開始■
■0406・署名継続■
■0409・署名提出■
AFEE エンタテイメント表現の自由の会
■TEACUPのBLOG閉鎖騒動で署名を提出してきました
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