ミニストップの“類似図書類”追放とイオン・グループの“指定図書”販売中止の問題点(暫定版)

今回のミニストップとイオンの決断には大きな危惧を抱いています。
取り急ぎ、編集長所感を公表します。
詳細や報道へのリンクは随時加筆します。
また場合によっては訂正を行いますので、錯誤がございましたらご指摘ください。

■ミニストップの“類似図書”追放
まず、ミニストップですが千葉市限定の話が全国展開に拡大したという点です。これが他のコンビニチェーンに波及すれば、コンビニから類似図書類を追放という話になります。

類似図書類はコンビニ側のレギュレーションを出版側が受け入れた形でのゾーニングです。現時点で全コンビニ店舗の一割程度のオーナーが様々な理由から自主的な判断で類似図書類を扱っていません。これは全く問題がありません。

しかしミニストップ本部が全店舗で取り扱わないと決断するのは問題があります。
まず、出版側との信頼関係に基づく“紳士協定”を一方的に放棄したこと。
もう一つは店舗オーナーの自主性を無視したことです。
いずれも信用にかかわる問題です。

この問題について千葉市長の熊谷さんは「私企業の判断」と述べられていますが行政からの「働きかけ」を認めています。
それについてはここで追及しませんが、今後拡大していくであろう「過度の自主規制の増加」については一定の責任を問うことになるでしょう。

■イオンは何をやろうとしているのか?
次にミニストップが属するイオン・グループの決断です。これはミニストップとは切り分けて考えるべきでしょう。

報道では「イオンが販売中止する対象は『各都道府県が条例で18歳未満への販売を禁止した雑誌類』」となっています。
これについて複数の解釈が成り立つことがまず問題です。

あえて、これを厳密に解釈すると、つぎのようなパターンが想定できます。

(1)A県で有害図書類指定を受けた「指定図書類」をA県のイオン・グループで販売中止にする。
(2)A県で有害図書類指定を受けた「指定図書類」を全国のイオン・グループで販売中止にする。

ここで留意しなければならないのは、各自治体の青少年条例です。全国の例を引くと大変なので、東京都を基準に考えると、「指定図書類」と「表示図書類(成年コミック、成年向け雑誌のマークが付けられた図書類)」の二種類には区分陳列(ゾーニング)が義務付けられています。

書店に成年向けの棚などの什器が備えられていれば、指定図書を移動させるだけですみますが、備えられていない場合は、取次に返本されます。今回のイオンの決定では成年棚や什器があろうがなかろうが自動的に返本されることになります。

(1)の場合は現在すでに行われていることにすぎません。問題は全国展開する(2)の場合です。これは地域の独自性を無視した過剰な自主規制につながります。東京都だけを考えれば「指定図書」の99%が性表現に対してですが、他府県では東京都では指定されていない図書類も多数指定されています。

長崎県では平成27年度までの指定状況を公開しており、27年には『まんがグリム童話』、『人狼ゲーム』(竹書房)、26年には『アイアムアヒーロー』(小学館)、『奴隷区』双葉社)が指定されています。過去には『別冊太陽「肉筆春画」』(平凡社)、著者が異議申し立てを行った『マンホール』(スクウェア・エニックス)なども指定され物議を醸しました。

追記:@HT_570さんより、最新版のURLを教えていただきましたので、下記リンク先を差し換えました。平成29年度上半期が最新となります。
長崎県有害図書指定状況(年度別)

福岡県では暴力団を題材にした実話誌やタトゥのムックが指定されており、イオンの販売中止が(2)であった場合、買えなくなるのは「エロマンガだけ」では済まないということになりますし、過去の指定についてはどうするつもりなのか? という疑問もあります。

福岡県・有害指定した図書類の一覧(平成29年度)

特定の図書類を指定する“個別指定”はわかりやすいのですが、よくわからないのが45道府県で導入されている“包括指定”です。これは青少年審議会に諮ることなく、雑誌、書籍であれば全体の何割、あるいは何ページ以上、ゲームや動画であれば何割あるいは何分以上という45道府県条例のそれぞれの基準で自動的に判断されます。書店での判断を助けるために「例示通知」を行う県もありますが、告示されない方が多いわけです。

つまり“包括指定”は各書店が自ら書籍のページ数をカウントして判断することになります。イオン傘下の45道府県の書店が実践できるのかは知りませんが、イオン本部においてはなんらかの方法を考えているはずです。そうでなければおかしいと思います。

もう一つはイオン・グループ総体での対処であるとすれば、イオン傘下の書店においてミニストップと同様に“類似図書類”を扱わない可能性があります。ただし、これは先の発表には含まれていませんので「明確な過度の自主規制」ということになり批判は免れないでしょう。

また、蛇足ですが、先の発表を裏返せば各都道府県で不健全図書類/有害図書類の指定を受けていない図書類は「売ることができる」という宣言でもあります。イオン傘下の書店が独自判断で選別することは問題なしとしても、顧客からの注文を受け付けないわけにはいかないでしょう。

■これは浄化作戦なのか?
「オリンピックに向けた浄化作戦の一端ではないか?」
という声も聞こえますが、ウラが取れない以上、その判断は留保します。
ただ、ひとつ気になるのは、地方から全国規模へ、行政の介入というパターンがかつての「有害コミック騒動」に相似しているという点です。
しかもDMMのレギュレーション強化やネット規制強化の動きを視野に含めると当時の比でないコトが起こりつつあるのかのしれません。
これが杞憂で終わればいいのですが、とにかく今は、正確な情報収集と情報共有に努めていきます。
(永山薫)


One comment on “ミニストップの“類似図書類”追放とイオン・グループの“指定図書”販売中止の問題点(暫定版)

  1. 最近良くないことが起きていますよ。
    ついこの前、ツイッターでコミックLOの公式アカウントが凍結されたことと、どこか類似点を感じます。

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