【イベント】4/16『こうの史代・おざわゆき:「はだしのゲン」をたのしむ』【アフターレポート】

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 4月16日、米沢嘉博記念図書館で開催中の『マンガと戦争展 6つの視点と3人の原画から+α』と連携して開催されたトークイベント「こうの史代・おざわゆき:「はだしのゲン」をたのしむ」に行ってきました。
 展覧会は昨年6月から9月まで京都国際マンガミュージアム(えむえむ)で開催された『マンガと戦争展 6つの視点と3人の原画から』の巡回展となります。詳細は米沢図書館のインフォメーションを参照してください。えむえむでの展示については『マンガ論争13』の紹介記事と雑賀忠宏さんによる「小林よしのり×呉智英対談」イベントレポートを参照していただければと思います(宣伝)。
 さて、16日のトークイベントは小誌でもおなじみのヤマダトモコさん司会で、同展に原画を出展しているこうの史代さんとおざわゆきさんの対談形式で行われました。
 こうのさんの『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅に』は広島と呉というふたつの都市の市民が遭遇した「戦争」を日常という視点から描き、おざわさんの『凍りの掌 シベリア抑留記』は、お父さんからの、『あとかたの街』はお母さんから聞いた戦争体験に基づいています。
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 対談は、お互いの作品について語るところから始まりました。こうのさんの二作品とおざわさんの『あとかたの街』は共に、丹念に描かれる戦時下の日常生活の中に徐々に、そしてある日、ついに米軍の爆撃という形で一気に踏み込んでくる「戦争」を描いています。
 我々のささやかな日々というものが、国家の大義や戦争という強大な力の前では脆くも崩れ去ります。
 ただ、この理不尽で圧倒的な力によって街は壊滅し、多くの人々が死に、傷付くのですが、それでも、しぶとく日常が死滅せずに続く。お二人の作品からは、そういう芯の強さを感じました。
 対談では、こぼれ話も一杯。
 こうの史代さんが、昭和14年の国語辞典を使って当時の言葉を再現し、おざわゆきさんが当時のモンペや着物の柄が画一化されないように資料を探したなど、非常に興味深かったです。
 おざわさんの『凍りの掌 シベリア抑留記』は、辛くて一部しか読めていないのですが、生き残って帰国した抑留者を、戦時捕虜ではないとする制度的差別(補償なし)、レッドパージが待ち受けていたという事実に慄然としました。ああ、全部ちゃんと読まねば。
 中沢啓治さんの代表作『はだしのゲン』についての対談は全体の1/4くらいだったかな? 同作は平和教育の教材に使われたこともあって子供の時に読んだ人も多いと思います。ただ、それによって反戦・平和を訴える側面が強調されすぎて、そもそも『週刊少年ジャンプ』の連載から始まった少年漫画であることが忘れられがちです。実際、全巻読む直すととこれがサバイバルと冒険に満ちた娯楽作品であることがわかります。
 対談のタイトルに「たのしむ」とあるように、もっと楽しく読んでいいはずです。
 ゲンに自己投影して、怒り、悲しみ、暴れるのもひとつの読み方ですが、対談でも言われていたように、一歩引いて、ゲンのダメな部分、間抜けな部分、オチャメな部分を楽しむという読み方もあるわけです。『はだしのゲン』については、『マンガ論争10』にゲンの研究者である吉村和真教授(京都精華大学)インタビューをはじめ特集を組んでいますのでバックナンバーを読んでいただれば嬉しいです(宣伝)
 さて、展覧会はまだ続きます。西島大介さんのトークイベントも予定。また本宮ひろ志さんからのご提供があって急遽展示が実現したそうです。

■展覧会概要
■会場:米沢嘉博記念図書館 1階展示コーナー
■期間:2016年2月11日[木・祝]~2016年6月5日[日]
■料金:無料
※特別整理などで休館する場合があるので、公式サイトで確認。

関連イベント:西島大介トークイベント「『ディエンビエンフー』:本当の戦争マンガの話をしよう」

■出演:西島大介(マンガ家)
■聞き手:宮本大人(明治大学国際日本学部准教授)
■日時:2016年5月21日(土)16:00-17:30
■場所:米沢嘉博記念図書館 2階閲覧室
■料金:無料 ※会員登録料金(1日会員300円~)が別途必要。
■人数:30~50名程度(先着順)

■関連リンク
劇場アニメ『この世界の片隅で』公式サイト

  

 

  

  


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