特別連載! ダーティ・松本×永山薫 エロ魂!と我が棲春の日々(11)

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■三回で打ち切りになった唯一のギャグ漫画

打ち切り

松本 さて、今回は黄金デカバットが打ち切りになったあたりからですね。
永山 三回で打ち切り(笑)。
松本 父親の死と重なって……。俺の描いたギャグ漫画ってこれくらいだけど、ギャグ漫画は大変だね。親が死んでも面白いギャグを考えないといけないんですよね。
永山 業ですかね。ギャグ漫画描いてる人は長く続けていると精神的におかしくなったり、描けなくなったり。
松本 谷岡ヤスジさんとかロングランナーはすごい。
永山 赤塚不二夫さんは。
松本 あの人も途中から面白くなくなる。
永山 ただブレーンがいたから。
松本 長谷邦夫さんとか。それでも20年くらいは面白かった。
永山 自分が一番最初に出会ったのは『おそ松くん』(※1)です。小学一年生の頃かな。
松本 その後『天才バカボン』(※2)があって、それで20年くらい。『おそ松くん』の前は少女漫画。そっちは見てない。
永山 他は『もーれつア太郎』(※3)。
松本 あー、それはあんまり憶えてないなあ。でも、その頃まで人気がありましたね。
永山 少女漫画の方では『ひみつのアッコちゃん』(※4)が大きいですね。
永山 『黄金デカバット』を打ち切ったタラコ唇の担当編集は?
松本 柏木さんって言うんですが、辞めたあと、ライターになったのかな。元ライターで、編集者になって、またライターに戻った。今、何やってるかは知りませません。
永山 『黄金デカバット』とストリップ物の漫画は単行本に?
松本 入れてません。面白くないし。私らしくない作品じゃないし。裸がちょっと出るだけだし。ストリップ物の連載も3回で終わった。

こちらも3回で終わったストリップ物『特出しエンジェル』

こちらも3回で終わったストリップ物『特出しエンジェル』

永山 先生が亡くなったら掘り出して、全集に入れます(笑)。それで、津田さんが念願の『将門』をみのり書房の『マスカット』でスタートさせたというところですが。
松本 NHKの1976年の大河ドラマがちょうど加藤剛主演で将門が主人公の『風と雲と虹と』(※5)だったので、それにあやかって。官能劇画誌なのに『将門』をやる。どんな時代なんだ(笑)。今だったらエロ漫画誌に『真田丸』にあやかった漫画を掲載するような話ですね。
永山 津田さんの『平将門』のために大の大人がチャンバラをやる(笑)。白土三平さんもチャンバラしたそうですね。兄弟かスタッフとチャンバラしてそれを活かしたって。
松本 さいとうプロではね、キャップの石川さんがガラスの前でポーズとっていろいろ工夫してましたよ。
永山 それで、官能劇画誌版の『平将門』はどんな話だったんですか?
松本 多少は色っぽいシーンもあったと思うんだけど、当時は全部がエロ漫画でなくてもよかった。数回で終わったけど(笑)。
永山 数回って、なんでまた?
松本 人気があるとは思えないじゃないですか。
永山 結末まで行かないじゃないですか。
松本 とんでもない。
永山 将門の「ま」まで行かない(笑)。
松本 取材も色々やってたんですが(笑)。
永山 背景が楽。関東平野で山がない(笑)。先生は時代劇やんないんですか?
松本 そんなにないですね。2〜3本は描いたかな。ファンタジー物で剣戟はありますけどね。日本の時代物はないなあ。時代物描いてたら、今頃、江戸物小説の表紙描けたかもしれない。
永山 『コミック乱』(リイド社)とか。
松本 あそこ、さいとうプロだからからダメでしょ(笑)。
永山 しかし、70年代は雑誌も色々やってたんですね。
松本 まだ編集者もマンガ家もエロ劇画誌の作り方がわからない。『漫画エロトピア』(KKベストセラーズ→ワニマガジン社)も最初の頃は裸がちょこっとあるくらいで。榊まさるさんが出てきて……。
永山 榊まさるさんとふくしま政美さんがエロ担当。でも、ふくしまさんはエロが売りという感じじゃなかった。前田俊夫さんも『漫画エロトピア』ですね。ストーリーがあってその流れで性描写が出てくる。
松本 みんな手探りでやってるうちに形ができてきた。エロ劇画の形ができあがるのは75〜6年です。『漫画ダイナマイト』『劇画ハンター』『漫画エロジェニカ』(海潮社)あたりから本格的にエロオンリー雑誌になっていった。でもストーリー・ラインはちゃんとあるんですよ。その分、エロに費やすページ数はせいぜい総ページ数の25%くらいだったかも?
永山 自分は、その頃はまだ学生ですから、そんなに数は読んでいないんですよ。本格的に読み始めるのは上京してからだから78とか79年頃ですね。
松本 70年代末だともう『漫画エロジェニカ』が発禁になってますね(※6)。


■脚註

※1:『おそ松くん』。『週刊少年サンデー』連載は1962-1969年。

※2:『天才バカボン』。複数の雑誌を渡り歩き、トータルで1967から1992年まで描かれた。

※3:『もーれつア太郎』。『おそ松くん』『天才バカボン』ともに三大ヒット作と呼ばれる。『週刊少年サンデー』1967-1970、『コミックボンボン』1990-1991年。

※4:『ひみつのアッコちゃん』。『りぼん』1962-1965年。

※5:大河ドラマ『風と雲と虹と』。海音寺潮五郎の『風と雲と虹と』『平将門』が原作。

※6:『漫画エロジェニカ』は1978年11月にワイセツ罪で摘発され、発禁となる。この件は『エロ魂!』でも描かれる。乞うご期待!



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