10月14日、18日に行われた、「文化庁メディア芸術祭20周年企画展―変える力」のプレス内覧会に参加してきました。
このメディア芸術祭は、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門において優秀な作品を表彰し、その受賞作品を展示するメディア芸術の総合フェスティバルです。今年でイベントが20周年を迎えるということで、20年のメディア芸術の歴史を感じさせるような作品群が展開されていました。今回は簡単にですが、いくつか気になった作品をピックアップして、メディア芸術祭の魅力を紹介していきます。
1.メイン会場レポート
14日の内覧会は、メイン会場のアーツ千代田3331にて開催されました。
まず会場に入ると、入り口の壁一面にびっしりと書かれた歴代の受賞作品のタイトルに圧倒されます。このタイトルの多さからは、メディア芸術祭の歴史を感じますね。
内覧会は、ツアー形式で監修者と受賞者がそれぞれ作品について解説したのち、自由内覧というスケジュール。
マンガ部門の展示は、東京工芸大学教授の伊藤剛さんが監修。メディア芸術のマンガ部門における20年間の変化、戦後マンガ史以降のマンガ史を見ることができます。『ジョジョリオン』『あの日からのマンガ』といった、3.11をきっかけにマンガというメディアが、どのようにリアルとフィクションを交錯させつつメッセージを伝えることができるかというテーマにおいて、効果的な表現をしたとして評価された作品から、『大きく振りかぶって』『GUNSLINGER GIRL』といった戦後ストーリーマンガが確定された時代よりあとに生まれた若手作家たちの作品、そして『弟の夫』『大奥』などの多様なジェンダー・セクシャリティを題材とした作品が中心となって展示されていました。
ほかに、マンガ関連の展示として、過去20年の受賞作、計451作品を自由に読むことができるマンガライブラリーがありました。
筆者が個人的に一番気になったのは、第13回アート部門受賞作品、David Bowenさんの『growth modeling device』。玉ねぎの地上部分をスキャンして、成長していくようすを3Dプリンターで出力するという、ほかの展示作品と比べて一際異彩を放っていた作品です。玉ねぎという生ものを水に活けるという、通常の美術館では制限があって行えないような特殊な展示形態を実現できるところが、メディア芸術祭の大きな強みですね。
また、偶然内覧に来ていた馳浩議員にお会いしました。馳議員は、前文科大臣で、MANGA議連の幹事長を務められている方です。
■開会式レポート
プレス内覧会後は、同会場の体育館(会場施設は元中学校)にて、開会式が行われました。
開式の挨拶には、実行委員会委員長の宮田亮平文化庁長官が登壇。宮田長官は、スピーチの中で、「私は子供であろうと大人であろうとすべてが芸術家であると思っています。ただし、それを生業にしているかの違いだけです。人には必ずときめきがあります。そのときめきをどうやって人に伝えていくかということをやるかどうかによって、違いが出てくるわけです。その手段として、メディア芸術が、アニメやマンガが、色んな手段があるわけです」とおっしゃっていたのが、とても印象的で共感できました。
そして、最後にメディア芸術祭20周年のお祝いとして、明和電機の土佐信道さん(第3回 デジタルアート(インタラクティブ)部門 優秀賞 『明和電機ライブパフォーマンス』)によるスペシャルパフォーマンスが行われました。土佐さんは「指ぱっちん木魚」を演奏し、シュールなパフォーマンスで会場を沸かせました。
2.「New Style New Artist – アーティストたちの新たな流儀」会場レポート
18日に行われたのは、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]で開催されている「New Style New Artist – アーティストたちの新たな流儀」の内覧会。こちらでは、VR技術を使った映像作品など、タイトルの通り新しい表現スタイルの作品群がピックアップされた展示となっています。
この日の内覧会では、受賞者がそれぞれプレゼンをしたのち、ツアー形式の内覧会を実施。その後、自由内覧というかたちに。下はフォトセッション時の集合写真。
左から、森脇大輔さん(WOW)、工藤薫さん(WOW)、関口敦仁さん(美術家/愛知県立芸術大学教授)、近森基さん(plaplax)、緒方壽人さん(Takram)。
では、ここから、またいくつかの展示作品を紹介していきます。
『Tokyo Light Odyssey』
東京の夜の街並みや、象徴である東京タワーの中を冒険することができる映像作品。プラネタリウムのような全天球型モーション・グラフィックスと、ヘッドマウントディスプレイによる2つの展示形態がありました。前者のほうで鑑賞しましたが、まるで映像に吸い込まれたかのような、すごい没入感を覚える作品です。
『Omotenashi Mask』
2020年のオリンピックに向けた「おもてなし」というスローガンをテーマにした作品で、ネイティブの英語を日本人が聞き取りやすい英語の発音に変換して読み上げ、逆に日本人の英語の発音はネイティブの発音に変換するという、なかなか便利な仕掛けをもった作品。日本人にとって聞き取りやすい英語は、ネイティブの人たちには全く聞き取れないらしいということにはちょっと驚き。日本語を英語に翻訳してミスコミュニケーションが発生するよりも、円滑なコミュニケーションが取れるのではないか、という画期的な提案がなされています。
『KAGE』
カラフルなコーンに触ることによって、影が動き出します。写真にあるのは飛行機ですが、他にも様々な影の種類があり、触るコーンによって出てくる影が違うので、いろいろ触って試したくなる作品。弊誌編集長の永山もかなりハマっていました。
簡単にではありましたが、一部の会場の展示作品について紹介させていただきました。ほかにも魅力的な作品がたくさん展示されていましたので、実際に足を運んでその魅力を感じてもらえればと思います。
会期はすでにはじまっており、どの会場も入場は無料です。また、今回は紹介できませんでしたが、UDXシアターで受賞作品を上映するなど、ICC以外のサテライト会場でもさまざまな催しが展開されているので、そちらについても要チェックです!
「文化庁メディア芸術祭20周年企画展―変える力」
開催概要
会期 2016年10月15日(土)~11月6日(日)
メイン会場:アーツ千代田 3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)
開場時間=11:00~19:00 入場無料。 ※入場は閉場の30分前まで。会期中は無休。
サテライト会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、UDX THEATER、国立新美術館、千代田区立日比谷図書文化館
入場無料。 ※開館時間、休館日は会場によって異なります。
公式HP:http://20anniv.j-mediaarts.jp/?_ga=1.1151977
(宇野ケイ)