選挙の季節! 石川大我さん(立憲民主党参議院選挙全国比例区候補者)に訊く


■まえがき
 いよいよ、選挙戦がスタートした。初動が遅れて『マンガ論争20』に間に合いませんでしたが、候補予定者(現在は候補者)の石川大我さん(立憲民主党)にお話をうかがうことができました。石川さんはトキワ荘再建などマンガ文化への取り組みが注目を集める豊島区議として活躍。またご自身がゲイであることをカムアウトし、LGBTについて真摯に活動されています。『マンガ論争21』は選挙後の発売となりますが、選挙後の石川さんの抱負など加えた本稿の増補完全版を『マンガ論争21』に収録予定です。

■ポリコレと『緩さ』の喪失

永山薫(以下:永山):石川さんが表現規制問題に興味を持たれるようになった経緯を教えてください。

石川大我(以下:石川):私は豊島区生まれです。大人になってから知りましたが豊島区は例えば「トキワ荘」があって、手塚治虫先生とか赤塚不二夫先生がマンガを描いていました。また、池袋の「乙女ロード」にはBLの本屋さんがたくさんあります。豊島区はマンガとアニメに関して非常に寛容だし、色々なコンテンツがそろっている街なんですよね。
  実は私はマンガを幼少期には読んでいません(笑)。私の子供時代は『Dragon Ball』がジャンプに載っていた全盛期でした。クラスのみんなは、おばあちゃんが一人でやっている本屋さんに、「あそこではジャンプが発売の二日前に手に入る」と買いに行っていました。今ならネットにさらされて炎上するかもしれませんが、私の少年時代はマイノリティとか弱者が生かされていた時代だったのかもしれないですね。

永山:零細書店が生き延びる手段のひとつでしたよね。

石川:「ポリティカルコレクトネス」にはいい面もありますが、「正しくあらねばならない」ということで、どんどん窮屈になっているような気がします。

永山:緩さ故の弊害もあったけれど、お目こぼしというか、「実害がほぼないし、この程度ならいいか」と……。今はどんどん正邪を分けるようになってきて、「窮屈だなぁ」と。

石川:そういう「遊び」の部分から何か面白いことができるという可能性を、私たちはどんどん摘んでいるような気がしますね。

■マンガに感情移入できなかった少年時代

石川:私自身の話に戻しますが、小学校、中学校の頃にはあまりマンガに接していなくて、『週刊少年ジャンプ』を今まで自分の人生の中で買ったことがないんですよ。そういう稀有な存在でした(笑)。ファミコンが発売されたのが小学校の3年生ぐらいで、みんなファミコンやっていたのに、クラスで私とお寺の住職の息子だけがファミコン持っていなかった。だから、私は多分スーパーマリオの一面がクリアできないんですよね。

荻野幸太郎(以下:荻野):それはご自身が興味を持てなかったのか、誰かにやってはいけないといわれたのか?

石川:ファミコンに関しては親の方針だったと思います。ただ、マンガに関しては描かれている世界のほとんどが「異性愛」なんですよね。やっぱり、自分が同性に心が向くと気づいてから、マンガのストーリーが他人事のようで感情移入ができない。ゲイの中には作品中の女の子に感情移入する人もいるんですけど、それができない自分がいた。では、暇な時間を何に使っていたかというと、結構新聞を読んでいて、中学生くらいの時にはすべての大臣の顔と名前が一致していた記憶があります(笑)。

荻野:どちらかというとフィクションよりも、ドキュメンタリーやジャーナリズムのほうが興味があったんですね。

石川:そっちのほうがしっくりきました。自分が同性に心が向くと気づいた中学2年生の時に、「自分はこの社会では幸せになれない」「自分のような人間はひとりだけだ」と思ったんですね。その時何に感情移入したかというと、異性愛を描くマンガではなく、政治や社会の動きのことだったし、その中でも憲法に大変興味を持ったんですよ。

 中学校の公民で、憲法について学ぶじゃないですか。その中に「幸福追求権」が13条、「法の下の平等」が14条で書いてあるにもかかわらず、自分のような人間が幸せになれないこの世の中はおかしいと思いました。気づいたのはたぶん14歳くらい。同性愛に対する差別や偏見がある社会に生まれて、しかし自分のゆるぎない気持ちとしては同性に心が向く。それが自分の自然な形であって、なにもおかしい存在ではないという思いが今の自分を作っているんだと思いますね。マンガに感情移入できたのは大学を卒業した後です。インターネットを通じてLGBTの当事者と出会い、私の本(『ボクの彼氏はどこにいる?』)の中にも書いたんですけど、「BL」という男性同士の恋愛を描いた漫画があることを知りました。その中に『Dragon Ball』の悟空とクリリンが恋愛をするみたいなマンガもあった。

 ゲイの友達と何人かで話していて、ヤオイ(※1)を買いたいんだけど一人だと買いに行けない、と。ヤオイは腐女子と呼ばれる女の子たちが読むものであって、男が買うべきではないという感覚があった。じゃあみんなで買いに行こうという話になって、3人くらいで書店のBLコーナーに連れて行ってもらって、せっかくだから自分の好みのキャラクターが出てくる本を何冊か買ったという記憶があって。それが2000年、25、6歳の時ですね。自分の人生の中において、マンガとかドラマとかは同性愛を扱っていなかったんですよ。だから自分を同化させるというエンターテイメントの楽しみ方をしたことがなく、BLに初めて心癒されたという原点があります。

●脚註
※1
ヤオイ(やおい、801):男性同性愛をテーマとした女性向けジャンルのマンガ、小説などの創作、及び二次創作。1979年に同人誌で「ヤマなし、オチなし、意味なし」の自嘲的な略語として使用された。現在ではBL(ボーイズラブ)という用語が主流になっている。

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