選挙の季節! 石川大我さん(立憲民主党参議院選挙全国比例区候補者)に訊く

■ゲイの表現と表現規制

小泉:2014年に村田ポコさんが描いたゲイのHIV予防啓発ポスターが公序良俗に反するという近隣住民からの苦情によって描き直しさせられるという事件がありましたよね。

荻野:どういう人がどういう理由で抗議をしたかがよく分からない事件でした。その後ネットでは事件に関して、一部のゲイからも「裸体をさらして性に奔放みたいなステレオタイプのゲイのイメージは公共広告としてどうなのか」といった声があり、アンチゲイからも「なんでゲイという理由だけで異性愛者向けではやってはいけないレベルの露出広告が許されるのか」という主張があり、批判の構図も複雑化してきたように思います。

石川:最近だとレインボーパレードの中での露出に対する拒絶感みたいなこともありましたよね。

荻野:「この露出したファッションの人がゲイのすべてを代表しているわけではない」という擁護もできるのかもしれないけれども、そうはいってもイメージとして連続してしまうよねという主張が出てきたときに、どういう形で区切ってあげればみんなが妥協できるのかということはなかなか難しい。類似の課題で、「フィクションはフィクションであって、現実でこういうことを奨励しているのではないのだ」という主張にどう説得力を持たせられるか色々な人が試行錯誤しているけど、こちらも道のりは険しいですね。

石川:個人の漠然とした感覚のようなものを規制に持ち込むのは非常に危険であると思っていて、なんとなくこういったマンガがあることによって性犯罪が誘発されるのではないか、なんとなく嫌な気分になる、というところを議論していくときりがないんですよ。自分がこのマンガが気持ち悪いから嫌だ、男同士がセックスしている描写は気持ち悪いから嫌だと言われてしまうと、そこから先に進まなくなりますよね。なんとなく漠然と嫌だという空気が広がることは非常に危険で、「なんとなく」で規制されてしまうとほかのものも同じ理由で規制されてしまい際限がなくなってしまう。そのせめぎあいの部分がとても難しいことだし、私たちに答えはないんでしょうけど。なんで不快に思うのだろうというところをみんなで突き詰めていくことが必要だと思います。

 先程の広告の問題でも、(新宿)二丁目というゲイの当事者が多い地域で、HIVの予防啓発に興味をもってもらおうという目的で広告をするならば、ガタイのいい兄貴がパンツ一丁でいることによって興味を持ってもらおうという製作者側の意図があったかもしれないし、そもそも服を着ている男の人がずらっといたところで、だれも見てくれない。私はその広告に何の問題もないと思います。

 ただ、じゃあこの看板を幼稚園の目の前に置いていいかといわれたら、地域の人たちとの話し合いの余地が生まれると思いますが、二丁目という場所、ゲイの当事者がいる場所なので、タブーなく考えていくということは必要ですよね。この事件でパンツ一丁の画像を出せなくなってしまったことで、今後半裸のイラストは描けなくなってしまいますよね。表現の自由は一回侵されてしまえば、それがスタンダードになってしまうので、前回脱いでだめだったのだから、今後ふんどしを履いた男の人の画像を出そうとなってもできなくなってしまう。

永山:どんな表現でも絶対何か言う人がいますよね。

石川:それはそうですよ、万人が納得する表現なんてものはなくて、変な話『水戸黄門』の入浴シーンが不快だと言う人もいるわけじゃないですか。

永山:最近、感じていることなんですが、LGBTの中には保守もリベラルもいて、議論できるようになってきたのはいいことだと思います。

石川:今まではLGBTであればみんなお友達であらねばならないみたいな風潮があったし、現にお友達だけで頑張ってきた部分もあったと思います。しかし、それがいろいろな人が声を上げることによって、LGBTの中にも多様性があるよねという当たり前のことがわかってきたということかもしれないですね。

永山:それは当事者の人にとっては大変なことでもあると思うんですけど、それを外から見ていると健康的なことに見えますね。

石川:私の考えとかに対して、反対をする保守の人もいらっしゃるけれども、「石川さんはこういうことを言っているけれども、別のことを言う人たちもいるから石川さんの意見はおかしいんじゃないですか」といってくる人がいる。……で、「まぁ、そういう人たちもいるでしょうね」という、本来それだけの話なんですよね。日本人というカテゴリーの中でもみんな同じ思想を持っているわけではない。反対するLGBTの人がいるから我々がやっていることは正しくないというわけではなくて、ただ単にそういう人たちもいるんですね、でも私はこういう反論を持っていますよ、というだけの話じゃないですか。マイノリティに対して、「マイノリティだから一枚岩であらねばならぬ」みたいなマジョリティ側からの勘違いみたいのは感じます。

■マイノリティの視点を忘れないようにしたい

荻野:最後になりますが、選挙に向けて最後にメッセージをお願いします。

石川:表現の自由がしっかり守られる暮らしやすい社会を作っていきたいです。それと同性婚が認められるということがG7の中では日本だけが同性同士の結びつきに対して法的な保障を与えていない中で、立憲民主党も法案を考えていてもうそろそろ出てくるのかなと思いますので、そういったところも後押ししていきたいですね(※2)。野党の皆さんとの共同で「差別解消法」という法案も出ているので、そういったLGBTに関連する法案を国会の中で作っていきたいです。

 仮に同性婚が認められても、マイノリティの視点を忘れないようにしていきたいと思っています。冗談でよく言われることなんですが、結婚プレッシャーは今まであったけれども、同性婚ができたら「石川君早く結婚しないの? 異性でも同性でもいいから早く結婚しなさいよ」というようなまた別のプレッシャーが来るんじゃないか、みたいな(笑)。ですが、LGBTであれ非婚者であれマイノリティがからかいや差別の対象となる社会にならないよう、社会の周辺にいる人たちの声をしっかりと国政に届けていくという意味では、社会から弾かれているマイノリティの中にこそ面白いものはあるし、これからの社会をより豊かにする種みたいなものがたくさん転がっているんじゃないかという気持ちを持っていきたいと思います。

 同性婚というとLGBTの方たちだけの制度と思われがちです。けれど日本は同調圧力が強く、マジョリティに入らなければ、と思ってしまったり、マイノリティにいることで変な目で見られたりすることがあったりすると思います。自分とは違う存在を認め合う、そんな象徴的な制度である同性婚は、LGBTに限らず、多種多様な文化・考えをお互いに認め合う社会の大事な一歩になりますし、「(自分と違うから)なんとなくダメだ」「(自分が認められないから)なんとなくダメだ」と思われがちな社会と決別する一助にもなると思います。

●脚註
※2
婚姻平等法案:インタビュー時点では、同性同士の婚姻も成立するとする「婚姻平等法案」は未提出でしたが、6月3日に立憲民主党は同法案を提出しました。同法案の詳細については尾辻かな子衆議院議員(立憲民主党)のブログの6月3日エントリーをご参照ください。概要、条文などの資料PDFへのリンクも張られています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です