特別連載再開! ダーティ・松本×永山薫 エロ魂!と我が棲春の日々(10)

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■故・玖珂みのをと伊万里すみ子
感じちゃう17才

松本 玖珂みのをさんの話をしましょう。伊万里すみ子名義でレディスの方で活躍してた。他に「くらしな涼子」という筆名も使ってましたね。元は少女漫画で描いていました。玖珂みのをさんの本はこれですね。『感じちゃう17才』。

永山 奥さんが絵を描いていた?

松本 最初の奥さんに絵を描かせて、テレビアニメ化が決定していたらしい。なのに奥さんが逃げちゃって、自分一人じゃ何もできないってんで自分も逃げちゃって、立つ鳥跡を濁して少女漫画界を去った。エロ漫画家になった時、次の奥さんにも絵を描かせて、指導力はあるんですね。けっこう売れてましたね。伊万里すみ子名義で売れて、マンション山のように買って、バブル弾けちゃって、大変。それで倒れた。それでも働いて亡くなった。松文館事件(※3)の傍聴行った時に廊下で「玖珂さん亡くなった」って聞いたんだ。「昨日お葬式行ってきた」って。松文館の貴志さんとも親しかった。リーダー的なとこあって、Macの会(※4)の司会とかやって。導入が早かった。まだコンピューターが海のものとも山のものとも知れない時期に「何に使うんですか?」「うーん、資料整理に」とか。けっこう新し物好きなんだな。絵を描くなんてとんでもない時代。Macも使いこなして。2色ページに命を掛けていた。活版ページはまあ普通に描いて、2色ページはけっこう凝った絵を描いてました。エロ漫画界で草野球ブームがあった時、この人が引っ張ってたとこありますね。オレもけっこう呼ばれて行ったりして。奥さんどうしてますかねえ。

永山 ずっと一緒にやってきた原作担当がなくなると厳しいですね。

松本 この回はまだ玖珂さんとも、誰とも出会う前ですね。エロ漫画の熱い時代はこれからです。まだ誰とも出会ってない。津田君は8回他に出てます。

永山 その辺は全部75年の話ですよね。それはまあ次回ということで。

松本 まだ高取英も出てこない。それはそうと『劇画あまとりあ』(※5)は11月に出すとか言ってたけど。

永山 12月にですかね? ちょっと間あけた方がいい(笑)。ほら、早見純先生の『性なる死想』(※6)が指定受けちゃったばかりなので。

松本 まだ原稿が入ってない人が一人いるみたい。定価2000円くらいで出すとか言ってましたね。

永山 少部数高単価で、一回やってみようかって感じですかね。

松本 早見さんは『血まみれ天使』(※7)も不健全図書指定を受けたんですね?

永山 受けてないと思います。直近で指定を受けたのが『性なる死想』で、随分前に指定を受けたのが『ラブレターフロム彼方』(※8)、早見さんの本は成年マークつけない方針ですかね?

松本 エロよりもグロが強いから、久保さんが「付けなくていいだろう」って。付けないのが重点的にやられる。

永山 東京都の青少年課は、成年マークつけない本しか見ていませんから。

松本 今度、我々の本も付けないらしいから、ひょっとしたら。

永山 そうなったらそうなったで、自分も書いてますから、一杯宣伝して、直販で。

松本 『性なる死想』の指定の影響を久保書店に聞いたら、そんなに悲観してなかった。まあ地道にコツコツ売れるだろうから。

永山 今度、話訊いてみよう。


■脚註

※1:伊万里すみ子(いまり すみこ)。別名:くらしな涼子(くらしな りょうこ)。夫・玖珂みのを。レディース漫画家。作品は夫の原作によるもの。『トラブル・メイカー』(1996、白泉社)をはじめ多数の作品があり、過去作の多くはKindle化されている。

※2:『感じちゃう17才』(1980、サン出版)。玖珂みのを作品には他に『ばあじん・ぶるうす』(1982、サン出版)、『危険大好き!』(1983、笠倉出版社)、『少女たちの夜想曲』(1984、サン出版)、『空色のくれよん』(1984、けいせい出版)などがある。

※3:松文館事件。2002年、元警察官僚の平沢勝栄衆議院議員(自民)の元に届いた投書により、松文館の『蜜室』(ビューティヘア)が刑法175条違反容疑で摘発。著者、松文館社長・貴志元則、編集局長が逮捕された事件。最高裁まで争われたが被告側が敗訴。漫画作品が猥褻容疑で立件されたのはこれが最初だった。当時の成年コミックとしては平均的な露出度であったこと、政治家が動いたこと、検事取調における脅迫的は発言など問題点は少なくない。

※4:J-Mac。Mac初期からプロの漫画家、イラストレーターの勉強会を開催する団体。阿部ゆたか、大橋吉彦、桜多吾作、千之ナイフ、志賀公江、日野日出志、平松伸二、森園みるく、叶精作、御茶漬海苔など会員数は100名超。玖珂みのをは副会長だった。http://www.i-jmac.com/

※5:『劇画あまとりあ』(2015、久保書店)。ダーティ・松本、早見純、三条友美の劇画3作にそれぞれ、モーリー・ロバートソン、会田誠、ロマン優光がエッセイを書き、永山薫が〆のテキストを書き下ろしたアンソロジー。インタビューの時点では未刊だったが、12月20日に艇が2400円で発売。2016年2月、第668回東京都青少年健全育成審議会において不健全図書指定を受けた。
劇画あまとりあ-1
劇画あまとりあ (AMATORIA)

※6:『性なる死想』(2015、久保書店)は2015年11月に不健全指定を受けている。
性なる死想01

※7:『血まみれ天使』(2011、久保書店)は指定を受けていない。
血まみれ天使―愛蔵版 (ワールドコミックスMAX)

※8:『ラブレターフロム彼方』(2008、久保書店)は2008年4月に不健全指定を受けた。


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