Dance with Eromanga
永山薫(以下・永山) 商業版『エロマンガノゲンバ』出版おめでとうございます。ということで、出版記念インタビューということになるんですが、けっこう紆余曲折がありましたね?
稀見理都(以下・稀見) 当初は久保書店から出す予定だったんですね。イザとなったら仏の久保さんに頼るというのはエロ漫画界の定番ですから。実は夢だったんですよ、いろんな出版社に断られて、最後の砦として久保さんで出してもらうというベタなストーリーに(笑)。ところがその久保さんにも断られるという大どんでん返し。まー書店取次の倒産とかがあり、急に事情が変わったせいなんですが。でも久保さんで断られた本の復活劇はある意味伝説になるかも。そんな感じです。
永山 けっこうハラハラしてました(笑)。で、この本は同人誌版『エロマンガノゲンバ』の最終号(左図)、即日完売になった本の増補改定版という位置づけになると思います。増補部分は?
稀見 陽気婢先生の巻頭口絵と甘詰留太先生の描き下ろし漫画「甘詰留太・1974年生まれの場合」です。甘詰先生のは『いちきゅーきゅーぺけ』の外伝です。インタビューは駕籠真太郎先生、早見純先生、有馬○太郎先生、甘詰留太先生ですね。
永山 甘詰さんが74年生まれ、俺が54年生まれですから「親子ほどの歳の差なのかー!」と驚きました(笑)。考えてみれば俺が『ホットミルク』で書いていた頃、甘詰さんは中高生だったんですね。それで、この本に収録されたインタビューで一番のベテランがダーティ・松本先生ですが、一番の若手は?
稀見 同人誌版全10冊70名の中で一番の若手は、たぶんですが井雲くす先生か横槍メンゴ先生じゃないかと。女性に年齢を訊くわけにはいきませんから、たぶんです。この本だと…、ええと甘詰留太先生か松山せいじ先生かな。
永山 今回の出版はすごく嬉しくて、これがバンバン売れて、同人誌版が全部商業化されるといいなあと思ってます。女性エロ漫画家の話も大事だし。
稀見 売れ行き次第なので、是非宣伝してください。でも、永山先生が「いい本だ!」と推すと売れない法則が(笑)。
永山 法則じゃなくて〝ジンクス〟ですよ。町田ひらくさんとか売れた人も一杯いますから。
稀見 町田先生にジンクスを破る力があったんですね。
◆エロ漫画との出会いは
永山 ベタな質問になりますが、なんでこんなにエロ漫画が好きなんですか? 出会いは何歳くらい?
稀見 成年コミックに関しては、も、もちろん18歳になってからですよ(汗)。
永山 でも成年マーク以前は18禁じゃなかったでしょ。
稀見 バレたか! 最初に読んだのはいわゆるエロ劇画誌です。河原とかに落ちてる。なので、作品、作家は覚えてませんね。はじめて自分で購入したエロ漫画は、中学生の時です。森山塔先生の『とらわれペンギン』(辰巳出版)に完全に持って行かれました。その後、阿○霊、戯○群、この○んと、結○詩樹、これ言い出したら1日かかりますので、飛ばします。
永山 はしょるなあ(笑)。で、その後、同人誌作ってたとか、商業誌にかかわっていたとか色々噂がありますが。
稀見 なんの話でしょうか、僕はシステム関係の会社を経営している一役員にすぎませんよ。エロ漫画の仕事は社員にも、クライアントにも言ってませんから(笑)。
永山 まあいいか。エロ漫画家インタビューを始めようと思った時期と、理由について聞きたいですね。
稀見 参考になる本が全然ないんですよね。調べてみてわかったんですが先行研究があまりないんですよ。米沢嘉博さんと永山さんの本があるぐらいで。書誌的な研究や漫画史的な研究、それから堀さんたちの社会学的な研究も出てくるんですが、フィールドリサーチというか、ゲンバの研究がない。『コミック・ジャンキーズ』で永山さんと伊藤剛さんが作家インタビューをやってましたが、2000年頃にぷっつり切れるんです。その後がない。
永山 結局、あれは本にまとまらなかったので、エロ漫画家だけのインタビュー集としては日本初ですね(注:「美少女マンガ創世記」(おおこしたかのぶ)が、えっちマンガ家というカテゴリで出版されている)。解説にも書きましたが、出版社・媒体の看板なしに作家インタビューってのは最初がすごく大変だったと思うんですよ。
稀見 最初は大変でした。ある程度業界で名前が伝わっているライターさんならともかく、いきなりは無理なので、まずはファンになって、お友達になって、それからですね。後になればなるほど口コミで「稀見さんなら大丈夫だよ」となりますが、1回でも失敗したら終わりですから、緊張の連続です。
永山 狭い業界なので、ヘタなことすると、一気に悪評が広がりますから。
◆今後は世界にエロ漫画を
永山 これまで、SF大会で一緒に企画をやったりしたわけですが、来年もなんかやりましょう、青少年条例をいじって、最終的に単行本化しようって話をしてましたが、他に何かありますか?
稀見 個人的にライターの仕事は細かくやっていきたいです。インタビュー以外のジャンルでの本も出したいですね。表現史やコラムなども。新書もいいですね(笑)。でも、一番やりたいのはやっぱり研究ですね。もともと基礎研究と言うことで、アーカイブの整理、データベースの構築などをやっていましたから。それを多くの人に公開して、エロ漫画を新しく研究したいと思っている若い方に利用してもらいたいです。そういう意味では、エロ漫画ゼミとかも開きたいですね。やっぱり、エロは若い人の文化にしなきゃダメです!
永山 なるほど。それは面白いですね。
稀見 あとは世界に日本のエロ漫画のすばらしさを広げたいですね。今はまだクールジャパンに引っ張られている部分がありますが、マンガと一緒に文化としても広めていければと思います。
永山 もう2回もコンベンションに呼ばれているんですね。海外ではHentai Specialistとして、日本に先駆けて単行本デビューしたわけだし、もっと攻めていこうと?
稀見 BL的には「誘い受け」って言われるんですが、エロマンガに関しては攻めていきますよ。まずは本が話題になってくれれば嬉しいです。あ〜ジャスティン・ビーバーが『エロマンガノゲンバ』をツイッターで紹介してくれないかな〜(笑)。
◆太っ腹なコミケ会場特典
永山 さて、特典について告知しておきましょう。『マンガ論争』のブースで商業版『エロマンガノゲンバ』購入して、コミケ3日目の東V39aのフラクタル次元に持参すると、ステキなプレゼントが用意されているとか?
稀見 冬コミケの新刊『エロマンガノゲンバノゲンバ』を進呈します。新刊だけ買うと500円ですが、単行本買ってくれたら無料ですよw
永山 AmazonやZINで購入した本でもオッケー?
稀見 あり! 買ったという申告でもOK!(その代わり感想訊きますw)
永山 「証拠に表紙ちぎって持ってこいや!」?
稀見 ないない! 写真ならOK!
永山 写真はセルフヌードで本で股間を隠してアヘ顔ダブルピース推奨。
稀見 男は不可w
永山 数に限りがあるから、一応先着順ってことで。
稀見 限りはあるけど、沢山用意するので大丈夫。なくなったら増刷します。
(一部修正しました。「500部」じゃなくて「沢山」です)。