答申の一歩手前まで来た第31期東京都青少年問題協議会拡大専門部会

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 5月16日、自画撮り被害防止のための第31期東京都青少年問題協議会拡大専門部会が開催されました。拡大専門部会は通常の専門部会委員に青少年問題協議会委員の都議(各会派)、学識経験者、関係行政庁職員などを加え、30名(オブザーバー、事務方を含む)による、協議会に準ずる規模になります。

■正しい性知識というのなら、現場の萎縮をなんとかしないと

 今回は5月11日開催の第4回専門部会で論議された答申素案をポリッシュアップした答申案が説明され、議論されました。進行は前回同様、木村光江部会長(首都大学東京教授)の司会で、重成青少年課長が答申案を読み上げ、適宜、解説するという形式です。

 答申素案から大幅な変更がなく、答申案そのものについてはあまり書くことがないのですが、初めて専門部会に出席する都議による質問、意見があり、前回よりも盛り上がりました。

 筆者が答申案で気になったのは青少年を「性的判断能力が未熟」な存在であるという文言が目立った点です。

 これは、青少年の自画撮り行為を規制するよりも、親世代の自覚を促し、大人の責任を明確にするために強調したと善意に解釈できますが、それを前提にしてしまうと、実態をミスリードになりかねないなと感じました。

 この点について、曽根はじめ委員(共産党都議)から、大人が介在しない子供同士のやりとりやイジメもあるのではないかという指摘があり、さらに教育については自画撮り以前に性教育をちゃんとすべきだという意見が出ました。

 曽根委員は、石原都知事時代に起きた七生養護学校事件について触れ、行政が教育現場に介入した結果、性教育を萎縮させたこと、現在もこの後遺症が残っていることを指摘し、性教育の拡充を求めました。また、当日欠席の坪井節子委員(弁護士、社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長)のコメント(代読)でも、性教育の重要性を指摘しています。

 性教育については、直接的に答申に盛り込まれはしないと思いますが、性的な被害は性に対する無知から起こります。誤った性知識を信じてしまったり、性をことさらに罪悪視したりすることのないような性教育によって性被害はある程度食い止められるのではないかと考えます。

■次はいよいよ答申か?

 次回、第31期東京都青少年問題協議会第二回総会(開催日未定)では、今回の議論を踏まえ、さらにポリッシュアップした答申が出ることになると思います。

 答申案の「おわりに」には次のような文言が記されています。

 青少年も多様であり、その性的画像に関する価値観等も様々であること、青少年を守るために他の者の正当な活動を不必要に制限するするものになってはいけないこと等に十分配慮し検討を進めた。
 これらを踏まえると、対策に当たっては、まずは、青少年自身の性に関する健全な判断能力を育成することが重要であることは論を待たないところである。

 これまでの取材報告でも繰り返していますが、極めて抑制的な姿勢です。
 しかしながら、条例改正、規制強化、は必要なのか? 必要だとしても、それがどこまで必要なのか? 教育、啓発、相談窓口の充実では足らないのか? という点について納得できるかというと、微妙と言わざるを得ません。
 筆者は、条例改正によって直罰規定を盛り込んだとしても、地方条例では実効性が限られること、他道府県、国政をも含んだ全国的な規制という方向が見えることなどから、ひとつ間違うと児童保護/救済のためであったはずなのに、ネット監視の正当化へ道を開くことを危惧しています。

 これが杞憂にすぎないことであることを祈ります。(永山薫)


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