写真展「私たちは消された展」は明日17日まで


■BANされた写真と写真家と


17日が最終日となる写真展「私たちは消された展」に滑り込みで行ってきました。SNSで、警告を受けたり、BANされたり、それどころか垢バンまでされちゃった作品と写真家の展覧会ということで、これは面白い企画だと思いました。
今回はAFEEマガジンとの合同取材ということで、難しいお話はAFEEさんに丸投げして、写真を鑑賞できればヨシ! とか思っていたんですが、行ってみたら、これが凄い。面白い。エロい、美しい、挑発的、ユーモラスな……と、個性の違う写真家9人と画家1人による合同展でキャパもちょうどいい感じ。
もちろん私にも好き嫌いはあるし、「これはフツウですね」とか「アタマがオカシイとしか!」とか「美しいねえ」とかの感想がアタマの中で渦を巻いていたりするわけですよ。基本、理屈をこねるのが商売ですからね。とはいえ、熱くて、楽しいことにはかわりがありません。

今回の写真展の発端となったエントリーをSNSに書いたhowdy gotoさんの写真がまず面白い。バンされた写真を含むサイケなトイレで男女がポーズを取っているシリーズが素晴らしい。どれもこれも普通じゃないんですよ。最高なのはトイレで競技用の自転車乗ってる人。狭いトイレに自転車! ムチャすぎる。
さて、取材というわけで、
在廊中の作家さんたちに「どこがアウトだったんですか?」と訊いてみました。

上からhowdy gotoさん、MASADA-SUMMERさん、酒井よし彦さん。自作の前に立っていただき「ココでしょう」という感じで教えていただきました。乳首や股間が写り込んでいるのがヤバイらしい。しかし、SNSの運営にクレーム入れても明確に「ココがアレでアレですからワイセツと判断」「性差別ですよこれ」なんてことは言いません。「乳首NGルールですので」みたいな感じ。ワイセツか芸術かでもなければ、なんらかの思想に基づいているわけではないようです。
正直に言いますが、乳首が見えたら何故イケナイのか理由が全く理解できません。性器が明瞭に見えていれば刑法175条違反に該当するおそれがあるわけですから、まだ話はわかりやす。結局は「ガイドラインに書かれているルールに則って判断」ということです。
誰が判断しているのか? てっきりロボットが機械的に判断していると思っていました。肌色の面積で抽出したらお相撲さんの写真が大量にヒットしたなんて笑い話もありますが、技術の進歩は凄いんだなあ……と。どうも、みなさんのお話を総合するとロボットが選び出したものを最終的に人間が判断しているようなんですね。ロボットも人間もミスをします。明かなミス、たとえば犬のモジャ毛を陰毛とミス判定なんてのも異議申し立てをすれば通ります。ただ結論が出るまでに時間がかかる。写真1点がBANされたなら、その間、他の写真を公開できあますが、垢凍結や垢バンだと何もできません。これ、表現する人間にはキツイです。

■BANされると何がガイドラインに抵触するか確認すらできない
今回の写真展でつくづく感じたのは、削除されてしまうと、「ガイドライン」と言われても、どこがどうアウトなのか検証が不可能になってしまうということです。実際にBANされた作品を見ても、何が問題なのか非常に判りづらい。推測はできますが、あくまでも推測なんですね。「削除」という性格上、仕方ないのかもしれませんが、相当モヤモヤします。
また、例えば「乳首」問題にしても、以前、海外のフェミニストが乳首の写った作品をBANされて、男女の上半身裸の写真をアップしたところ、女性の写真だけBANされて「男の乳首ならセーフって性差別だろ」と怒りの声を挙げていたことがあります。「何故、女性の乳首がダメなのか?」「ルールですから」では無理があるでしょう。
この写真展の痛快なところは「自分の表現したいものを表現して、みんなに観てもらいたい」という姿勢です。「表現の自由」や「表現者の権利」を強く主張するというよりは、「撮りたい写真を撮るよ。観たい人は観てよ」ということに尽きるんですね。
ただ、それだけなんですが、この「ただそれだけ」が、SNSのルーティン化した「BANするお仕事」や、私的検閲への疑問といったアレコレを含む批評行為になっている。そこが見どころだったりもするわけです。
という感じで自分なりに咀嚼しながら取材を続けていると、山田太郎さんがひょっこりと登場。AFEEさんとの合同取材なので、不思議ではないんですが、山田さん、16〜17日は大坂&名古屋じゃなかったっけ?(取材:永山薫)

■写真展概要
—凍結削除警告センシティブな内容を含みます—
私たちは消された展
■場所:ギャラリーCORSO
千代田区神田神保町3-1-6日建ビル3階
■期間:2月11〜17日 最終日17日は10〜17時
■出展作家:マキエマキ/木野正好/howdy goto/天野功/18% Gray Koichi Nomi/フクサコアヤコ/MASADA-SUMMER/栗村新/逢見一月/酒井よし彦

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