すでにネットでも情報が流れていますが、竹熊健太郎さんが腸穿孔で緊急入院しました。経過は良好なようですが、本人からの電話では「永山さん、一週間の絶食と点滴を申し渡されました。……地獄ですよ」というわけで、かなり辛いみたいです。また、経過次第では手術もありうるので、とにかく頑張って(というのも変な表現ですが)養生して欲しいですね。
さて、そんなわけで「たけくまメモMANIAX」で第3回まで連載した「ダーティ・松本✕永山薫 エロ魂!と我が棲春の日々」は今回から急遽お引っ越し版をこちらで掲載することになりました。もちろん「電脳Mavo」連載の『エロ魂!』との連携企画です。インタビューを先に読むか? 本編を先に読むか? 順番はどうでもいいんだけど、個人的には本編→インタビューがベストかと。
松本 おさらいから行きましょうか。永山さん、こういう光景見てますか? 当時の新宿の西口です(原著4-5p)。
永山 いや、この頃は上京前ですね。上京したのが78とか79年ですから。
松本 俺が出てきたのは69年、ちょうどこんな感じでしたね。今の都庁のあたりです。水道局があって。
永山 淀橋の浄水場ですね(※1)。
松本 川本三郎原作の映画『マイ・バック・ページ』(山下敦弘監督、2011)の冒頭にこのシーンが出てきて、CGでしたけど、山下監督はまだ生まれていない頃なのに、よく調べたなと。
永山 資料は一杯ありますから。
松本 あれは感心しましたね。ボクにとってあの時代の風景ってあれですよ。
永山 本に使ったのは写真撮ってあったんですね?
松本 ちょうど撮ってあったんで、今思えばもっと撮っておけば良かったかなと。過去には戻れない(笑)。
永山 資料撮影って大変ですよね。こないだ天王寺キツネの『うぽって』(※2)読んでたら、あとがきで熱海で千枚くらい写真撮ったって。熱海城から狙撃するシーンをそこで思いついたって。それで、描き始めると、「あっ、このアングルから撮っておけばよかった」って。
松本 熱海も最近行った時はさびれてましたよぉ~!(笑)。当時は観光客、いっぱいいたのに!見る影もないくらいに……。
永山 あと、訊きそびれたのが、この原稿の作り方(※3)。今時やってる人いるんですか?
松本 いないでしょうね。今は原稿用紙売ってますから。でも、見開き用の原稿用紙がないから、見開きは自分で作ってましたね。原稿用紙を切って繋ぐと、真ん中でガクッとペンが引っかかるでしょ。
永山 なるほど、繋がないで大きい紙で描くんですね。
松本 永山さんが上京した頃って24時間やってるコンビニありました?
永山 あれ、どうだったかな?
松本 昔は朝7時から11時。
永山 セブンイレブンですね。
松本 この写真見て思い出した(原著p48-49)。深夜やってるコンビニがなかったんで、高円寺時代に深夜にやっている食い物屋ってサッポロ・ラーメンしかなかったのでよく行きましたよ。
永山 次のページにビニ本が出てくる(原著p50)。
松本 ビニ本は知ってました?
永山 知ってるどころかビニ本のコピー(ポエム)書いてました(笑)。なかなか虚しい仕事で、「誰が読むんだよ」って思いながら。
松本 写真だけじゃ物足らないんですかね。なんかあった方がいいみたいな。
永山 なんか、そうですね。編集者もそうだったんじゃないですかね?
松本 写真だけだったら編集者いらないじゃんって(笑)。
永山 「仕事やってる」感出したかったとか(笑)。
松本 元々、白夜書房がビニ本作ってた。
永山 白夜の前身のグリーン企画が作ってた。ビニ本で資金作って出版社になった。
松本 それで、出版社の集まりで「あんたのとこ楽でいいな。」って言われて頭に来て、末井(昭)さん呼んで、「雑誌作れ」と。それで生まれたのが『ウィークエンドスーパー』(セルフ出版、1977年創刊)とからしい。それが今やあんな大きな会社になっちゃって。
永山 大きくなっちゃったけど最近色々と危機がありましたね。昨年は子会社のコアマガジンがワイセツで挙げられましたが、その前には別の子会社が運営している携帯サイトが賭博で挙げられて、その余波でパチンコ雑誌が廃刊に……、まあ別会社で引き継いだんですけど(※4)。
松本 パチンコ雑誌も末井さんが作ったんだよね。
永山 『写真時代』もそうですよね。雑誌関係は大きく分けて末井班と中沢(慎一)班の二つだったんです。中沢さんが『Billy』『Hey Buddy!!』『ビデオTHEワールド』のエロ系で、後に分社してコアマガジンになるんですね。俺は中沢さんの仕事が多かった。末井さんとはあまり接点がなかったんですが、色々武勇伝が聞こえてきましたよ。
松本 武勇伝?
永山 真偽のほどは知りませんが(笑)、クリスマスパーティでツリーの飾り付けが全部万札だったとか(笑)。
松本 バブルあったんだ(笑)。サン出版は『アムール』(※5)が当たった。当時、誰かの葬儀のときにエロ系出版社の人が大勢来てみんな高級車に乗ってたとか……はともかく、一時『アムール』は36万部くらい行ってた。コンビニ入ってたし。
永山 36万部!
松本 矢萩貴子さん(※6)のマンガが当たったんですよ。
永山 今も活躍中ですね。レディス、ホラー。
松本 これはずっと後年になりますがレディス・コミックの黄金時代かな。矢萩さんのいる関西方面{?}まで1ページあがるたびに新幹線で原稿取りに行ったりして、いっそのこと会社で近くにマンションでも買って編集を滞在させたほうが……なんて話も……。
永山 すげー!
松本 おかげで本社の横にもうひとつビルが建ったらしいし。でもその分出る釘は打たれる……で、警告の嵐!でどんどん部数を減らされていきましたが……。
永山 『アムール』苦戦してますね。昔は月刊だったのが隔月刊になり、去年の10月号から季刊になりました。しかも、そのタイミングで不健全図書指定くらっちゃった。でもまだしぶとく生き残ってます。
松本 『アムール』作った水野君ってのが凄いんです。フキダシ、擬音、汗など編集長自ら夜遅くまで会社に泊り込んで描き込んだりして迫力を出してます。
普通だったら著作権侵害で怒られるとこですが、あのさかもと未明さん(※7)ですら「水野さんならいいや」って許してたらしいから、人徳ですか?
永山 原稿に手を入れるって、よほどの信頼がないと許されないですよ。
松本 その水野君を育てたのが「エロ魂!」にこの後出てくる櫻木さん。
永山 サン出版と言えば櫻木さんでしたね。
松本 その櫻木(徹郎)さん(※8)もすでに退職ですが週に数回、嘱託で通ってるらしい。今度、映画でも作ろうかなって酒場で言ってるらしいけれど
その昔、荒戸源次郎(※9)の天象儀館にもいて「朝日のようにさわやかに『愛欲の罠』」で役者やっていたし……は「エロ魂!」のこのあと出ます。
永山 大学の先生じゃなかったんですか?
松本 違う違う、先生になったのは佐川(俊彦)さん(※10)ですよ。
永山 あっ、そうかそうか(笑)。
松本 佐川さんには同人誌「FUCK OFF!」を創っていたころインタビューして『JUNE』創作の裏話をいろいろ聞きました。
ひとつだけ紹介すると……。
佐川 当時、『ガロ』でも『COM』でもないものを出そうと思ってちょうどその頃、竹宮惠子さんとか萩尾望都さんらの美少年マンガが出てきて、これでやってみようと……。
松本 なぜ男同士のものを描きたかったんでしょう?
佐川 わりと長女だった人が多く、女である不自由さやプレッシャーが強くて、男のキャラだともっと自由に動かせるし、女の描き手だと男同士だと生々しくなくてかえって純粋な愛が描けたんじゃないですか。
永山 長女だからというのが面白いですね。
松本 他に言い残したことないか?(原著を見ながら)
永山 Twitterで、「テンション上がってきたー」って読者がいましたよ。
松本 原稿料の話もしたし。半分ピンハネされて1000円だった。
永山 前回も言いましたが、数年後、俺は8000円から9000円貰ってた(笑)。
松本 破格ですよ(笑)。サン出版で一番高い沢田竜治さん(※11)で7000円か8000円の時代ですよ。ありえないですよ。それバブルですよ(笑)。
永山 漫画家続けた方がよかった(笑)。
■ここから今回分
松本 前回はここまでか(原著60pを見ながら)、「新宿公園では……小多魔若史が覗きをしていた」あの頃、公園に痴漢を仕切ってる為さんってのが出てきて、小多魔さんが怒ってた「ここは俺の縄張りだとか偉そうに!たかが痴漢のくせしやがって」なんて。
永山 終戦直後の上野の山のオカマみたいですね。視察に来た警視総監を殴ったって(笑)。
松本 ここからですね今回。
永山 バイトやってて、「本宮ひろ志が嫌いだ」という発言。嫌いなんですか?
松本 権力志向の漫画ばっかし描いてたからず~っと嫌いだなぁ。
永山 今もですか? ああいうの嫌いですか?
松本 天下取る話ばっか描いててずっと気に入らないっすね! 阿呆らしい!
■サルにはフェティシズムがわからない
永山 それで、バレエの話になる。もう、この頃から描いていたんですか?
松本 そうですね、持ち込み時代から描いてた。で、持って行ったのに、この小原って野郎なんだけど、バレリーナのエロスが全然ピンとこないんだよね~。頭悪いな~と思ってね。猿にはフェティシズムが解んねえんだな~(笑)。まぁ、もうとうに編集辞めてるでしょう?
永山 バレエは少女漫画の流れですか?
松本 そうでしょうね。『マキの口笛』とか見てましたから。牧美也子さん(※12)の。東京出てきたらね。銀座の洋書店イエナ、あそこに行くとバレエの本が一杯あった。あの頃の夢は、ここにあるバレエの本を全部買い占めたい(笑)。
永山 道玄坂のチャコットに行くとか?(※13)
松本 「闇の宴」というアダルトビデオを作ったときに一度行きましたが、そういえば、こないだラジオにチャコットの衣装担当してる男性が出てきて、フィギュアスケートかなんかの衣装飾ってある。これいくらいですか? 30万円くらいですと(笑)。
永山 誂えだったらその桁じゃないかも。
松本 よっぽど金持ってないとできない競技だなあ。
永山 フィギュアは金かかるって言いますね。
松本 リンク借り切るだけで相当金かかるらしい。
永山 バレエは衣装使い回しだって聞いたことありますよ。
松本 そうなの?
永山 主役は知らないけど、コールドバレエとか公演で入れ替わるじゃないですか。そしたら、「これ合うから着て」と。長い公演になるとボロボロになっちゃうらしい(笑)。実演は見ないんですか?
松本 大きいのはないですね。小さい公演は幾つか見ました。実際、大きい公演は高いじゃないですか(笑)。
永山 そこはですねご招待プレゼントとかをマメに出すんですよ(笑)。一年に一回くらい当たりますから。二三回当たりました(笑)。
松本 レビューはちゃんと観てます。日劇のレビューとかはその昔よく行きました。松竹のSKDも一応行ったけど、あっちはもうひとつだった。バレエはテレビの録画とかちゃんとやってます。編集してDVDに残してもう20本くらいあるかも。
永山 『白鳥の湖』ってあまりにポピュラーすぎて敬遠してたんですけど、たまたまゲルギエフ指揮のマリインスキー劇場のヤツ観たら、これがすごいんですよ(※14)。
松本 何を今頃言ってんですか(笑)。
永山 若い時はホラ、古典よりモダンとかコンテンボラリーに行っちゃうじゃないですか。
松本 そんなことないよ(笑)。どっちも素晴らしいですよ。『ブラックスワン』(※15)は観ました?
永山 いやあ、まだです。『赤い靴』のデジタルリマスター(※16)もチラ観しただけ。
松本 今観ても踊りも撮影とかも素晴らしい傑作です。自分でも「赤い靴」をマンガにしました。「ダーティ・松本の赤い靴」という単行本描き下ろしです(※17)。
永山 Amazonではプレミアがついてますよ(笑)。
松本 踊りを止めない足を切り落として、その切られた足だけが荒野の彼方に踊りながら去っていくってアンデルセンの原作自体がかなり凄いです。
永山 最近は図書館でオペラやバレエのDVD借りられるので助かりますよ。
松本 買うと高いからねえ。あと、衛星の『クラシックチャンネル』入ってたんだけど、しばらく観てると再放送ばっかになるんで止めました(笑)。『プレイボーイチャンネル』も入っていたけれど、1日中エロだらけってげんなりしますね。朝っぱらから肉と肉とがぐっちょんぐっちょんだと、さすがにげんなりする(笑)。いまはTSUTAYAの宅配レンタルで月2本くらい。
永山 朝から焼き肉やホルモンが食えるか(笑)。
松本 たまに観るとありがたみがある(笑)。
永山 持ち込みに話戻しますが、バレエネタが受け入れられなかったと。で、「土漫に行けや」と。土漫については前回、話が出ましたんで、そっちを参照して貰うとして。
松本 しょーがないヤツだなあと。画期的だったのに。
永山 それで「原稿を見る作法・その4 他社の悪口など口にしてはならぬ」と、編集者を射殺して、手榴弾をぶっこむ! この時の拳銃はガバメントですね。
松本 編集者って昔から他社の悪口をよく言ってたけれど、勤め人ってそういうもんですか……はともかく、別に拳銃はどうでもいいじゃないですか(笑)。
永山 銃は面白いじゃないですか。さっきの『うぽって』で、無可動実銃の話が出てきますが、作画の資料にどうですか?
松本 それは参考にはなるなあ。
永山 でも、先生、描くのめんどくさいでしょ(笑)。
松本 アシスタントがいれば描いてくれるけれど、自分で描くと1日2~3丁描いただけでその日が終る…(笑)。
永山 さいとうプロ行って、かっぱらってくりゃいいじゃないですか。
松本 もう出入り禁止ですよ(笑)。
永山 それで食べ物の話になって(原著p72)。
松本 50円以内で喰えるもの。今でも大丈夫ですよ。
永山 サバ缶、安売りで100円しますよ。高いのは200円以上。
松本 生卵、魚肉ソーセージは優等生。
永山 チクワは5本で98円とかありますね。サバの水煮缶、こないだ久しぶりに喰ったら美味かった。
松本 さんざん喰ったんで、見ただけで吐き気がする。そういう人けっこういるみたいだね。とんねるずの『食わず嫌い王』に出てくる人でも、家でそればっかり食べさせられていた食い物が嫌いというケースが多い。
永山 スティーヴン・キングがそうだって言うじゃないですか。売れない頃、奥さん(タビサ)がダンキンドーナツで働いていて、持ち帰りのドーナツをいつも食ってたんで、それがトラウマになっちゃってドーナツが食べられなくなったったってどっかで聞きましたよ。
松本 その気持ちわかりますよ。見ただけでウエッてなっちゃいますよ。
永山 それで、サバ缶すらなくて、流しの下の隅っこにあったチャーハンの素で、お腹を壊す。これは本当にあった話ですか?
松本 そうなんですよ。オカズ買う金がなくて。
永山 チャーハンの素が傷むってあるんですかね?
松本 よっぽど古かったんでしょうね(笑)。
永山 お腹壊して悶絶しているところに電話がかかってくる。「やっと電話買った」(原著p74)。
松本 買ったんじゃない。実は親父に買ってもらったんだ。買う金がなかった。当時7万か8万したよね。今、電話債券って紙くずじゃないですか。
永山 俺も駒込駅前の電話債券屋で月賦で買いましたよ。
松本 その後、売りに行ったらねえ、昨日よりも今日の方が×円安いと1日×円ずつ値下がり……とかでなんとか1万くらいで買ってもらえた。
永山 いいなあ。
松本 固定電話、今NTTで買うと、なかなか大変らしい。さま~ずの大竹が携帯だけじゃなく自宅にも電話を入れようとNTTに連絡したらあちらこちらにたらい回しされて、変なビルの一室でようやくひっそりと手に入った……って話をしてましたが?
永山 本当ですか? 契約は簡単だし、電話機はビックカメラ行けばあるし(笑)(※18)。
松本 NTTから買おうというのが間違いかな(笑)。
永山 固定電話、使わないですよね。
松本 ファックスも壊れてそのまんま。ファックス10回の内、8回は間違いかセールス。もうアホらしくなって(笑)。こないだ店に見に行ったら、プリントしないやつがあるんだね。受信して画面で見て、必要なものだけプリントする。
永山 複合機にしちゃえば?
松本 プリントもコピーもあるから。別にダブって買うことないな。
永山 ファックスいらないですよね。たまにファックスで申し込むイベントとかありますけどね。
松本 Kindle本出そうとすると、アメリカに免税手続しなきゃなんない。向こうからファックスが来るんだけど、ファックスないんだよな。郵送してもらおうと思って。手続も面倒。みんなよくやってんな。感心しますよ。
永山 Kindle本出すんですか?
松本 画集だったら言葉いらないから、海外でも売れる。第1弾はバレリーナ。海外にもファンがいるだろう。
永山 エロすぎて消される(笑)。
松本 アダルトじゃないから大丈夫(笑)。子供でも買える。アダルト版は別に作るんです。それは通販。そうやってペンネーム分けて、海外向けの名前で。
永山 ダーティじゃなくて?
松本 違います。クリスタル・スワンって名前にしました。なんだソレって(笑)。
永山 話戻します(笑)。電話がかかってきたところですね。仕事の依頼。すごい山がきました(笑)。この条件(原著p74)で2ページって(爆笑)。
松本 実話誌のようなエロ系の本は日々叩かれてますから規制が厳しい。ギャグ漫画描いてる人が、漫画に警察官が出てくるんだけど、「これやめてくれ」って、某ガードマンにされてしまってこぼしてました。
永山 表現規制じゃないですか立派な。
松本 ことなかれ主義で。
永山 最近もびびっちゃったトコあるんですよ。BL小説の水戸泉さんに聞いたんだけど、警官殺しちゃう場面があって、出版社が腰引けちゃって「これカンベンして下さい」って。
松本 小久保さんなんかも「刺激しないでくださいよぉ」ってね。
永山 この11項目のレギュレーションはどうやってクリアしたんですか?
松本 それは透明人間です(※19)。
永山 透明人間はわかるんですが……。
松本 肝心なところで男の姿が消える(笑)。
永山 汗もダメでしょ?
松本 喘ぎ声もダメね。
永山 だって2ページでしょ!? ギャグ?
松本 いや、覗きの話です。セックスしない。ちょっとエッチ。
永山 これ、今だったら少年誌でもセーフですよ。
松本 裸は描いていい(笑)
永山 「表紙にドギツイ絵を描くな」って、2ページですよ。表紙抜いたら1ページしかないですよ。わけわかんないっすよ。先生、これ取ってあるんですか?
松本 どうだったかな?
永山 これは見たいですよ。どうやったらできるのか見ないとわかんないですよ。
松本 見なくていいですよ。
永山 作品の善し悪しよりも、この難題をどうやってクリアしたかに興味がある。
松本 それはねえ、知らない方がいいんですよ(笑)。みんな、頭の中で想像して創作するように。
永山 覗きというからには絡みなしですよね?
松本 そうなりますね。
永山 そうすると女の人の半裸のエッチなポーズ。
松本 そうそう。一人で悶えてるって実話雑誌の場合多いですよ。
永山 トイレに入ったと思ったらオナニーしてる! とか?
松本 まあ、やりようはいくらでもありますよ。
永山 エロ漫画で面白いのは、規制とかあると、あの手この手やるじゃないですか・
松本 昔、玖珂みのをさん(※20)が表のページと裏のページ、それぞれ一人で悶えているんですが透かして見ると「合体してやってる!」、みたいに工夫していろいろやってましたよ。
永山 ジグソーパズルみたいなことやってる人もいましたね。
松本 切ってあれすると重なるみたいなのもありましたね。大変だな、色々と(笑)。
永山 これで、原著の第3章分回Mavo版の第4回目終わりましたね。
脚註
※1:淀橋浄水場。1892年着工、1898年に通水を開始した。1960年に東村山浄水場が完成し、徐々に機能を縮小。1965年に廃止。その広大な跡地が現在の西新宿高層ビル群である。ダー松先生が上京した頃にはまだその先駆けである京王プラザホテルは開業していない(1971年開業)。
※2:軍用銃擬人化学園コメディ。対談で触れた「熱海編」は第3〜4巻に収録。あとがきは第3巻を参照。
※3:原著第二章、電脳Mavo版第3回参照。昔は漫画原稿用紙がなく、漫画家が自作するものだったというエピソード。ちなみにこの件に関しては漫画家さんたちから「まだ、やっている」という証言が複数寄せられた。
※4:2012年、白夜プラネットの携帯サイトに換金可能なゲームがあり、社長が常習賭博容疑で逮捕された。この事件により、白夜書房はパチンコ雑誌、パチスロ雑誌を自粛して休刊→新会社ガイドワークスに移管。
※5:1993年創刊の老舗レディースコミック誌。
※6:最新巻は『薔薇のヴァンパイア』(ぶんか社)。
※7:レディース、歴史漫画、児童漫画など幅広く活躍。また、保守系論客、テレビコメンテーターとしても知られる。
※8:ゲイ雑誌『さぶ』(1974年創刊)、元祖BL誌『JUNE』(創刊号は『JUN』、1978年の創刊)の創刊編集長。『マガジンWOoooo!』、『THE SUGAR』などの編集長。
※9:映画監督、プロデューサー。監督作品に内田春菊原作の『ファザーファッカー』(1995年)、車谷長吉原作の『赤目四十八瀧心中未遂』(2003年)、太宰治原作の『人間失格』(2010年)がある。プロデュース作品には本文中の『愛欲の罠』(1973年)、『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)、『陽炎座』(1981年)など。
※10:『JUNE』の創刊企画者、後に編集長。現在は『月刊COMICリュウ』編集スタッフ、京都精華大学准教授。筆名・藤田尚。少女漫画家ささやななえ(ささやななえ子)の夫としても知られる。
※11:アクション劇画、時代劇画、官能劇画と幅広く活躍。映画監督・鈴木則文原作の『聖獣学園』(1973年)は同監督により多岐川裕美主演で映画化される。
※12:少女漫画家。1957年、貸本漫画『母恋ワルツ』でデビュー。1960年代は『りぼん』『マーガレット』『少女フレンド』などで活躍。代表作『マキの口笛』(1960年)、『銀のかげろう』(1968年)。60年代末期からレディースコミックの先駆けとなる大人の女性向けの作品を発表。池田悦子原作の『緋紋の女』で1974年日本漫画家協会賞優秀賞を受賞、『源氏物語』で1988年小学館漫画賞を受賞した。この時代の代表作としては他に池田悦子原作の『悪女聖書』などがある。初代リカちゃん人形のデザイン監修者としても知られる。ちなみに夫は松本零士。永山と昼間たかしが零士先生のインタビューにうかがった時、美也子先生にお茶を出していただき、二人とも感涙にむせんだ。
※13:バレエ・ダンス用品のメーカー。店舗は全国にある。渋谷が本店。
※14:マリインスキー劇場バレエ団は1740年頃に設立。ソ連時代はキーロフバレエ団だったが、ソ連崩壊後、元の名称に戻った。
※15:ダーレン・アロノフスキー監督による2010年のアメリカ映画。日本ではR15指定。
※16:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー監督による1948年のイギリス映画。バレエを題材とした古典的名画。
※17:『ダーティ松本の白雪姫』(1981年、久保書店)に収録。
※18:Amazonでも購入できる。15000円以下の機種が4種もあってびっくり。
※19:当時のレギュレーションでは、男女が腰を重ねた絵も禁止。そこで編み出されたのが、性行為中の男の姿を消して、女の姿だけ描く「透明人間」のテクニック。
※20:2003年に死去。『感じちゃう17才』(サン出版、1980年)、『少女たちの夜想曲』(サン出版、1984年)、『空色のくれよん』(けいせい出版、1984年)など著書多数。妻との共同ペンネーム(伊万里すみ子、くらしな涼子)では原作を担当し、こちらも人気が高かった。最盛期には「年に25冊くらい、単行本、特集号を出したこともあったようです」(「ダー松の明日はこっちだ!」2007年12月30日付コメントより)