自画撮り被害防止に関する答申が知事に手渡されました 東京都第31期青少年問題協議会第2回総会

00IMGP0382
5月30日、東京都第31期青少年問題協議会第2回総会が開催され、自画撮り被害防止について議論を続けてきた専門部会(児童健全育成部会)が答申案を提出。総会では答申案を了承し、答申として小池百合子東京都知事に提出しました。

答申は答申案と全く同じものです。細かく言うと、答申素案(第4回専門部会)→答申案(第5回拡大専門部会)→答申案(誤脱などの修正)→答申という流れになります。今回は、答申の可否を決めて、都知事に提出するというセレモニーであり、議論はありませんでした。

まず、事務方の井上青少年対策担当部長の定数確認、公開原則についての説明に続いて、古賀正義協議会副会長(中央大学教授)による答申案の概要説明がありました。

古賀正義協議会副会長(中央大学教授)
000104IMGP0366
本協議会は知事から諮問を受け、児童ポルノ等の被害が深刻化する中で、特に現在、喫緊の課題となっている青少年の自画撮り被害に焦点を絞り、現状と課題を整理した上で、具体的な対応策について、多面的に検討をおこなってまいりました。検討にあたっては、青少年は性に関する健全な判断能力が形成途上であり、いつの時代においても、保護者はもちろんのこと、学校や地域の大人も含め、社会全体で守っていくべき存在であるということを原点といたしました。

なお、青少年も多様であり、性的画像に対する価値観も様々であることや、青少年を守るために他の者の正当な活動を不必要に制限するものなってはならないことにも充分配慮して、検討を進めてまいりました。自画撮り被害の多くがネット上の1対1のやりとりの中でおこなわれている実態がございますので、対策に当たりましては青少年自身の性に関する健全なる判断能力を育成することが重要だと考えます。加えて青少年の判断能力が未熟であることにより、その福祉が阻害されないように、保護者、学校、地域社会等の大人の知識、技能を向上させることも重要でありますので、普及、啓発等もさらに充実させる必要があります。なお、普及啓発に当たっては青少年に対して画像送信にかかわる将来のダメージについて充分理解させるとともに、画像を要求する行為が悪いことであり、それを断ることは悪くないことであるという意識を喚起することが重要であります。また技術的な対応を促進することによっても青少年の未熟な判断能力を補完できる面もありますので、民間の取り組みとの連携をも触れております。

さらに、現行法令では規制が及ばない青少年の未熟な判断能力に付け込んだ悪質な勧誘行為という何人も青少年に対して行うべきでない行為については条例において禁止することを提言いたしました。なおこの禁止規定は取締りにより青少年の画像提供を未然に防止する他、先ほど申しましたとおり、青少年に対して、このような勧誘行為が悪いことであり、それを断ることは悪くない認識を拡げる効果も期待されます。最後に審議においては多様な視線を取り入れるため、部外有識者から研究内容や取り組んでいる事業など様々な角度から着眼点や意見をいただき、このこと、この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。そして自画撮り被害に遭い、悩み苦しむ青少年が一人でも減るよう、本答申を踏まえた取り組みが一刻も早く行われ、この取り組みが東京から全国に拡がっていくことを期待しております。

答申手交(トップ写真)に続き、小池都知事挨拶。

小池百合子都知事
00IMGP0386

都知事、小池百合子でございます。本日は皆様お忙しいところ、青少年問題協議会第二回総会にご出席を賜りまして、まことにありがとうございます。今年2月の第一回の総会におきまして、児童ポルノ等被害が深刻化する中での青少年の健全育成についてということで諮問をさせていだだきました。その後、ご熱心なご審議を重ねていただきまして、いち早く答申をおまとめいただきました。委員の皆様に心より感謝申し上げます。

答申の内容については詳しくうかがいました。強く心に残るのは、青少年にダメージが一生残るということを理解させるという点でございました。この、ひとつの行為が、いかに将来の支障となるかということを、大人から見れば、子供は何故、考えないでやってしまうのか? 自画撮り被害で、画像がインターネットで広まってしまうと、回収不能になります。自由闊達な情報の交換というのがスマホなどの利点ではありましょうが、それをなんとかするのも可能ではないか? 民間ベースの仕組みを使って何ができるか?

青少年を守るべき大人が、青少年の特性につけこんで悪質な行為を行う勧誘行為というのはまさしく犯罪でございまして、ここで要求に応じる必要はない。断ることは悪くない。この認識を青少年の間に広めて、そして画像を渡す前に相談窓口、こたえーるなどに相談してもらうということが重要でございます。御提言いただきました普及計画、青少年の健全な育成に関する条例の改正などに早急に取り組んでまいりたいと考えております。

知事退席後、木村光江専門(児童健全育成)部会長(首都大学東京教授)挨拶

木村部会長
00IMGP0395
非常にタイトなスケジュールにかかわらず、委員の先生方、事務局員のみなさまのおかげで答申をとりまとめることができました。本当にありがとうございます。ひとつひとつ言うことは出来ないんですけど、委員の先生方お一人ずつから、それぞれのご専門の観点に沿った、非常に貴重な多くのご意見、ご指摘をうかがいました。改めてお礼申し上げます。そのお陰で充実した内容の答申となったものと0自負しております。またオブザーバーの皆様、副会長からも非常に貴重なご指摘をいただきました。自画撮り被害の実態を知れば知るほど、その深刻さは質量とも想像を超えるものであって、喫緊の課題であるということは改めて認識いたしました。副会長のお話にもありましたけど東京都としては是非答申の内容の実現に向けて早急に取り組んでいただきたいと思っております。
(以上、それぞれの発言は要旨。聞き取れなかった部分、聞き違いもあると思いますので、正式な発言内容については公開予定の議事録を参照してください)

この後、事務方の重成青少年課長より、付託事項である「ひきこもり、ニート、非行等の社会的自立に困難を有する若者に対する相談支援における課題と対応について」の説明と「若者支援部会」のスケジュールが紹介されました。

■所感
00IMGP5407
答申内容についての所感は第5回拡大専門部会と大きな異同がないため、当該エントリーを参照してください。

付け加えておくと、第31回協議会は、ネット規制強化が前提という懸念材料もあるとは言え、実情を説明し、規制に慎重な委員の意見も取り込み、短い時間の中で抑制的な姿勢で進められたと思います。石原知事時代の第28回協議会の強権的な姿勢とは対照的と言えるでしょう。これには様々な要因がありますが、第28期の「非実在青少年」騒動で、都民、マンガ関係者が反対運動を展開し、知事提案にダメ出しをしたことも大きいと思います。強引に押し通すよりは、説明し、バランスをとった提案で落とし処を求めるという姿勢の方が話を進めやすいわけです。

今後、知事がこの答案をどう扱うのか? 知事提案で条例改正へと向かうのは確実でしょう。答申からかけ離れた改正案にはならないと思いますが、注目し続ける必要があります。パブリックコメントの募集があるのか? あるとすれば何時か? また改正案が都議会の委員会でどう論議されるか? 取材を続けたいと思います。(永山薫)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です